クラレオンパンオプティクスは『遠方・中間(60cm)・近方(40cm)』の3点にピントが合う回折型3焦点眼内レンズです。
「白内障手術後にできるだけメガネをかけたくない」という方に選ばれやすい設計で、運転・PC作業・読書など日常生活でよく見る距離が見やすい眼内レンズです。
本記事ではそんなクラレオンパンオプティクスの特徴・メリットを詳しく解説していきます。
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
クラレオンパンオプティクスとは?

クラレオンパンオプティクスは、アルコン社の「回折型3焦点眼内レンズ」です。
白内障手術では濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズを挿入しますが、その際にどのレンズを選ぶかで術後の見え方が大きく変わります。
パンオプティクスは、遠方・中間・近方という3つの距離にピントを合わせられるため、術後のメガネへの依存度を下げることが可能です。
【院長コラム】『回折型3焦点』ってどういうこと?

回折型3焦点眼内レンズというのは、光の回折現象を利用して、遠・中・近の3つの距離にピントを合わせることができる多焦点レンズです。
眼鏡なしの生活を目指すもので、高い“裸眼視力”が期待できるレンズとして注目されています。
一方で、デメリットとしてハロー(光の輪)・グレア(眩しさ)や夜間のコントラスト低下といったことが起こる可能性があります。
「回折型3焦点レンズ」が複数点にピントが合う仕組み
回折型レンズは、レンズ内に刻まれた同心円状の微細な溝が、光の進み方を変え、遠方・中間(約60cm)・近方(約40cm)という3点にピントが合うよう設計されています。「中間60cm」がパンオプティクスらしさの出るポイントで、ちょうど机に座ってPCモニターを見る距離に相当します。
60cmは現代人の生活でもっともよく使う距離のひとつで、食卓に並ぶ料理や棚に並ぶ本なども、この距離感に収まります。
「近方40cm」は読書やスマホ、手芸などの「手元作業」とイメージしていただくと良いでしょう。
この3点すべてピントが合いやすいため、日常生活の多くの場面でメガネなしで過ごせる可能性が高くなります。
グリスニングを抑えた「クラレオン素材」の特徴
「クラレオン パンオプティクス」という名称に含まれる「クラレオン」は、素材の名前です。
眼内レンズで素材が話題になるのは、「グリスニング」という現象があるためです。
グリスニングとは、アクリル製のレンズで起こることがあるレンズ内の微小な空胞です。ほとんどの場合が無症状ですが、コントラスト感度の低下やまぶしさ(グレア)の原因になることがあります。
クラレオン素材はこのグリスニングが起こりづらいため、「数年したら視界がボヤけてきた…」といった不具合が非常に起こりづらくなっています。
パンオプティクスの他にも「クラレオンビビティ」という眼内レンズもあります。パンオプティクスとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
3焦点で日常生活はどう変わる?
パンオプティクスの3焦点が実際の生活でどう役立つかを、遠方・中間・近方という3つのシーンに分けて具体的に見ていきます。それぞれの焦点距離が「自分の使い方と合っているか」を確認しながら読んでみてください。
遠方視力…「運転時/外出時」もメガネなしで快適に
遠方フォーカスによって、運転中の信号・道路標識・横断歩道の歩行者などをメガネなしで見やすくなります。
外出先でも、スーパーや施設の案内表示、向こうから歩いてくる人の顔など、遠くを見るたびにメガネを取り出す手間がかなり減少します。
中間視力…「私生活/職場」で見る領域もしっかりカバー
「机の前に座ってモニターを見る」という距離がちょうど60cm前後になりますが、パンオプティクスはまさにそういった「中間距離(中間視力)」が見やすくなるよう設計されています。
PC作業・ノートPCのキーボード・テレビ画面・食卓のメニュー・スーパーのレジ画面・車のカーナビなど、現代人が日常でもっともよく使う距離がこの距離ですね。スマートフォンは通常40〜50cm前後で使うことが多いため、中間と近方の境目あたりで使う形になりますが、後述するように、これらの距離の視力も問題なくカバーされています。
近方視力…「読書/手元作業」もしっかり見える
近方視力(約40cm前後)は、たとえば「本を手に持って読む」「スマホを操作する」といった距離に該当します。パンオプティクスはこういった近方視力にも十分対応しています。
【院長コラム】至近距離を見る場合は、メガネが必要なケースも
知っておいていただきたいのは『至近距離』に限ってはメガネが必要な場合があるということです。
たとえば裁縫をする場合、「針に糸を通す」などといった至近距離での作業をする場合はピントが合いづらい可能性があります。
こういった場合は、メガネが必要なことがあります。
パンオプティクスとビビティ、どちらを選ぶ?
くまだ眼科クリニックの選定療養レンズでは、先ほども少しご紹介した「クラレオンビビティ」も取り扱っています。名前は似ていますが構造が異なっており、それぞれに得意な領域と苦手な領域があります。
ここからはパンオプティクスとビビティの違いについても触れていきます。
パンオプティクス(回折型3焦点)と、ビビティ(EDOF)の違い
まず最大の違いは「ピントの合い方」です。
パンオプティクスは光を3点に振り分ける「回折型3焦点」で、遠方・中間・近方という3つの焦点にピントが合うのが最大の強みです。
読書も運転もPC作業もメガネなしで見える可能性が高いのですが、たとえば夜間の運転時などに「ハロー・グレア」という光の散乱が起こってしまい、やや視界が眩しくなってしまうケースがあります。
一方ビビティは、光を分割せずに引き伸ばす「EDOF(焦点深度拡張型)」という設計で、遠方から中間距離まで切れ目なく自然に見えます。
パンオプティクスほど強い近方視力は得られませんが、夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)が起こりづらくなっています。
どちらが優れているという話ではなく、生活スタイルによって合うレンズが異なります。
パンオプティクスが向いている人
パンオプティクスが向いている方は次の通りです。
- 遠・中・近すべてを日常的に使い、メガネへの依存度をできる限り減らしたい
- 読書も運転もPC作業も、できれば裸眼でしたい
- ハロー・グレアよりも「メガネなしの利便性」を優先したい
ただし、他の眼の病気がある方は、多焦点眼内レンズが向かないことがあります。最終的な判断は検査結果を踏まえて、医師と相談のうえで行ってください。
まとめ:クラレオン パンオプティクスを選ぶ前に確認しておきたいこと
クラレオン パンオプティクスは、遠方・中間・近方の3点にフォーカスする回折型3焦点レンズです。
メガネへの依存度を下げたい方に向く設計ですが、夜間のハロー・グレアが出る可能性があることも知っておく必要があります。
この記事のポイントは、以下です。
- 3焦点(遠方・中間60cm・近方40cm)で日常の多くの場面をカバーできる
- ハロー・グレアは一定数の方に出るが、程度には個人差がある
- 利便性を重視するならパンオプティクス、夜間の見え方を重視するならビビティ
どちらが自分に合うかは、夜間運転の頻度や手元作業の内容によっても変わります。もちろんこういった記事もぜひ参考にしていただきたいのですが、まずは眼科医に相談し、ライフスタイルも踏まえて医師と一緒に選択するようにしてください。
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