眼内レンズの「選定療養・自由診療」の違いとは?医療制度の仕組みを院長が解説

眼内レンズの「選定療養・自由診療」の違いとは?医療制度の仕組みを院長が解説

かつては単焦点レンズによる「保険診療」が一般的でしたが、現在は多焦点眼内レンズを用いた「選定療養」や「自由診療」など、選択肢が大きく広がっています。

しかし、制度や費用が複雑で、「自分にはどのレンズが適しているのか」「費用の差はどこにあるのか」がわからない方も多いかと思います。

本記事では、眼内レンズにおける「選定療養」と「自由診療」について専門的な視点から詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 保険診療・選定療養・自由診療の違いとは?
  • 選定療養の「自己負担検査」って何?
  • どのレンズにするかは、どう判断すればいいの?

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

そもそも:「保険診療」「選定療養」「自由診療」は何が違う?

白内障手術の費用体系は、使用するレンズの種類や国が定めたルールによって「保険診療」「選定療養」「自由診療」の3つに大きく分かれます。それぞれの仕組みを詳しく解説します。

1. 保険診療…手術費用やレンズ代を含め、すべてに保険が適用

保険診療は『単焦点眼内レンズ』を用いて白内障治療を行う場合に適用されます

日本の公的医療保険制度が適用されるため、手術代や検査代はもちろん、単焦点眼内レンズ代も含めた合計額に対して、年齢や所得に応じた1割から3割の自己負担分のみを支払っていただきます。

手術費用を抑えることは可能ですが、単焦点眼内レンズはピントが合う範囲が「遠方」か「近方」のどちらか一点に限られるため、術後は日常生活の多くの場面でメガネによる矯正が必要となります。
しかし、ピントの合った距離をしっかり見るという点では、最も優れたレンズです。

2. 選定療養…「保険診療」と「保険外診療」の併用

選定療養の考え方

選定療養(せんていりょうよう)とは、2020年4月から導入された「保険診療」と「保険外診療」を組み合わせて受けられる制度です。

手術費用そのものや、処方されるお薬代などには通常通り公的保険が適用され、手術全体の費用のうち「多焦点レンズを選ぶことによって発生する追加料金(差額代金)」を自己負担としてお支払いいただきます。

多焦点眼内レンズは遠方・中間・近方のうち複数の距離に対応しやすい設計のため、単焦点レンズと比較して、術後の眼鏡の必要性を減らすことができるといったメリットがあります。

一方で、単焦点眼内レンズに比べてレンズ自体の費用が高くなる(約10倍)ため、その差額分に加え、必要な追加検査費用も含めて自己負担額が大きくなります。

この選定療養は、『白内障手術の保険診療部分は保険適用のまま、多焦点眼内レンズに関する追加費用のみを自己負担する制度』となります。

注意点:選択できるレンズは「厚労省が認可したもの」に限られる

選定療養は、多焦点レンズを用いたすべての手術に適用されるわけではなく、“厚生労働省が認可したレンズ”を選択した場合のみ利用できる制度となります。

そのため「未認可の海外製レンズを選びたい」という場合には選定療養ではなく、後述する『自由診療』となります。

3. 自由診療

自由診療は、公的保険を一切使用せずに、手術に関わるすべての費用を患者様が全額負担することになります。

国内でまだ承認されていない海外レンズを希望される場合が「自由診療」となります。

「保険診療」や「選定療養」にない海外レンズを選べるという利点がありますが、検査から手術、術後の通院費用まですべて自己負担10割負担)となるため、最も費用が高額になります。

【院長コラム】「選定療養レンズ=質が低い」ではありません

『自由診療レンズ=最新鋭の海外製レンズ』で、「選定療養レンズは質が低いんですか?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。

多焦点眼内レンズの選択において、「選定療養」と「自由診療」の区別は、レンズの性能差ではなく、「国内承認の有無」と「費用の仕組み」の違いによるものです。

選定療養の対象となっているレンズは、厚生労働省の厳しい審査を経て承認を受けた、安全性と有効性のエビデンスが確立されている高品質なレンズです。

世界的にシェアの高い定番モデルも多く、多くの症例で安定した視機能の改善が実証されています。

一方で自由診療レンズは、最新のテクノロジーを搭載しているものもあり、国内未承認のため全額自己負担となるものです。高機能ではありますが、それが必ずしも「すべての人にとっての正解」とは限りません。選定療養レンズは、費用を抑えつつ信頼性の高いレンズを挿入できる、合理的な選択肢とも言えます。

当クリニックでも「クラレオンビビティ」「クラレオンパンオプティクス」をはじめとする、精度の高い選定療養レンズを豊富に取り揃えています。

関連ページ:『当院の取り扱う「多焦点眼内レンズ」について|くまだ眼科クリニック

保険の適用範囲と費用目安

区分 使えるレンズ 保険の適用範囲 費用目安(当院・片眼)
保険診療 単焦点眼内レンズ 手術・検査などすべて適用 約5.3万円(3割負担の目安)
選定療養 多焦点眼内レンズ(国内承認済) 手術技術料等の保険部分のみ 33〜35万円(税込)
自由診療 多焦点眼内レンズ(国内未承認) 適用なし(全額自己負担) 50〜59万円(税込)

※費用目安:2026年4月 現在

自己負担となる「追加検査」は何のために行うのか?

多焦点レンズを選択する場合、白内障手術のための検査に加えて、「レンズを挿入すること」を踏まえた精密検査が不可欠です。

多焦点レンズは、光を複数のピントに振り分けるという特殊な構造上、角膜の状態や目の光学的なわずかな乱れ、さらには瞳の大きさの変化などに非常に敏感です。

そのため白内障手術を行うにあたって最低限必要な術前検査に加えて、選択する多焦点レンズが本当に患者様の目に合うのかを入念に検査する必要があります。

これらは白内障手術における必要検査ではなく「多焦点レンズを選択することで必要になる検査」であるため、保険外診療となります。

「どの眼内レンズにするか」は、どう決めればいい?

多焦点・単焦点にかかわらず、眼内レンズは医師と一緒に決めることが大切です。目の状態によっては、多焦点眼内レンズがご使用できない場合があります。

『術後の見え方』に、ある程度要望があれば、医師との相談も進めやすくなると思います。

  1. よく運転をするか?特に「夜間の運転頻度」はどれくらいか?
  2. 私生活で一番「よく見る距離」はどこか?
    ➡︎スマホや読書など「手元を見ること」が多い or 趣味のゴルフや釣りなど「遠距離を見ること」が多い など
  3. 眼鏡をかけることへの抵抗感はあるか?
  4. 「仕事で求められる見え方」はあるか?

これらを事前に整理しておくだけでも、診察での相談がスムーズになります。

「まだ何も決めていない段階」でも、希望をなんとなく言葉にしてみることで、医師からご自身に合ったレンズの提案を受けやすくなります。

まとめ:診療制度をしっかり理解した上で、レンズ選定を行うことが大切

眼底検査の様子

保険診療・選定療養・自由診療は、「使えるレンズ」と「保険が使える範囲」が異なります。

この記事のポイント

  • 保険診療は「単焦点レンズ」、選定療養・自由診療は「多焦点レンズ」
  • 「選定療養」は、国内承認の多焦点眼内レンズ(一部自己負担)
  • 「自由診療」は、国内未承認の多焦点眼内レンズ(全額自己負担)
  • 「どの眼内レンズにするか」は私生活を踏まえて医師と決める必要がある

選定療養か自由診療かは、生活スタイルや費用を合わせて判断することが重要です。

また多焦点眼内レンズを希望されても、目に他の病気がある方は多焦点眼内レンズの適応にならないことがありますので、詳しくは受診する病院からの説明を聞くようにしてください。

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