【眼科医監修】クラレオンビビティの特徴について|「術後の生活」を見据えた眼内レンズ選びを

【眼科医監修】クラレオンビビティの特徴について|「術後の生活」を見据えた眼内レンズ選びを

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クラレオン ビビティとは

クラレオン ビビティは、アルコン社が開発した「焦点深度拡張型(EDOF)」という新世代の多焦点眼内レンズです。

従来の多焦点レンズは、光を遠・中・近の複数の「点」に振り分ける仕組みでした。一方、ビビティは「X-WAVE™」という独自の技術で、入ってきた光を滑らかに「引き延ばす」ことでピントが合う範囲を連続的に広げます。

この技術の最大の利点は、遠くから中間距離(パソコンや料理など)まで、切れ目のない自然な見え方が得られることです。さらに、従来の多焦点レンズの課題であった夜間の光のにじみ(ハロー)やギラつき(グレア)を、単焦点レンズとほぼ同等レベルまで抑制しています。

「メガネへの依存度を減らし、アクティブに生活したい。でも、夜間の運転などでの見え方の質も妥協したくない」というご希望を、高いレベルで両立できる非常にバランスの取れた高性能レンズです。

EDOFとは

EDOFとは「Extended Depth Of Focus」の略で、日本語では「焦点深度拡張型」と訳されます。これは、眼内レンズのピントが合う「深さ(奥行き)」を拡張する技術のことです。

従来の多焦点レンズが、光を遠方・中間・近方といった複数の「点」に分けてピントを合わせるのに対し、EDoFレンズは光を滑らかに引き延ばすことで、ピントが合う「範囲」を連続的に作り出します。例えるなら、ピントが合う場所が「飛び石」状なのが従来型、「なだらかなスロープ」のように切れ目がないのがEDoFです。

この技術により、遠方からパソコン作業などの中間距離まで自然な見え方が得られ、同時に多焦点特有のハロー・グレアが少ないことが大きな利点です。

ハロー現象・グレア現象とは

ハローグレア現象とは、主に多焦点眼内レンズの手術後に、光がにじんで輪に見えたり、まぶしくギラついて見えたりする特有の見え方の総称です。

1:「ハロー現象」について

ハロー現象とは、夜間に街灯や自動車のヘッドライトなどの光を見た際に、その周りに「光の輪」や「もや」がかかったように見える症状のことです。霧がかかっている時のように、光がぼんやりと滲んで見えるのが特徴で、虹色の輪が見えることもあります。

この現象は、主に多焦点眼内レンズの構造に起因します。レンズに刻まれた同心円状の溝が、光を異なる距離に振り分ける過程で、一部の光が焦点の合わない輪として網膜に映し出されるために生じます。ほとんどの場合、時間経過とともに脳が慣れて気にならなくなりますが、夜間の運転が多い方などは特に注意が必要です。

2:「グレア現象」について

グレア現象とは、強い光が視界に入った際に、「まぶしくて見えにくい」「光がギラギラする」「光が筋状に伸びて見える」といった症状のことです。例えば、対向車のヘッドライトを非常にまぶしく感じたり、太陽光が乱反射して視界が白っぽくなったりします。

ハローが光の周りの「輪」であるのに対し、グレアは光そのものによる「まぶしさ」や「ギラつき」を指します。これも多焦点眼内レンズの構造による光の散乱が原因で生じやすい現象です。物がはっきりと見えにくくなるため、特に日中の運転や逆光の状況で影響を感じることがあります。ハロー同様、多くは時間とともに慣れていきます。

クラレオン ビビティの特徴

「クラレオン ビビティ」が多くの患者様に選ばれているのには、他のレンズにはない優れた特徴があるからです。ここでは、その主な特徴を具体的に解説していきます。

1. 遠方から中間距離まで自然な見え方に(多焦点眼内レンズ)

ビビティ最大の特徴は、独自の「X-WAVE™テクノロジー」によって実現された、遠くから中間距離(腕を伸ばしたくらいの距離)まで滑らかにピントが合う点です。

従来の多焦点レンズは、遠方用・近方用といった具合に、いくつかの焦点が”段階的”に設定されていました。そのため、焦点と焦点の間でピントが合いにくい「谷」のような部分が存在し、見え方に不自然さを感じることがありました。

一方、ビビティは光の波面をコントロールして焦点の合う範囲を”引き伸ばす”ため、ピントが合う範囲に切れ目がありません。これにより、遠くの景色やテレビ画面から、パソコンのモニター、料理中の手元、カーナビといった、日常生活で最もよく使う中間距離まで、非常に自然で連続的な見え方を実現します。メガネをかけたり外したりする煩わしさから解放され、アクティブな毎日を送りたい方にとって大きなメリットとなるでしょう。

2. ハロー・グレアの発生が極めて少ない

上でも紹介しましたが、夜間の運転中、対向車のヘッドライトがギラギラと眩しく見えたり、街灯の周りに光の輪が滲んで見えたりする現象を「ハロー・グレア」と呼びます。これは、光を複数の焦点に振り分ける従来の多焦点レンズで起こりやすい特有の症状でした。

「クラレオン ビビティ」は、光を振り分けるのではなく、引き伸ばすという仕組みを採用しているため、光のエネルギーロスがほとんどありません。その結果、ハロー・グレアの発生頻度は、単焦点眼内レンズとほとんど変わらないレベルにまで抑えられています。

「多焦点レンズに興味はあるけれど、夜の見え方が心配…」という方にとって、この特徴は非常に心強いポイントです。見え方の”質”を重視する方に最適な選択肢と言えます。

3. 高品質な素材と眼を守るフィルター機能

レンズの土台となる素材には、アルコン社の最新素材「クラレオン」が使われています。これは非常に透明度が高く、長期間にわたってクリアな状態を保つことができる高品質な素材です。また、眼の中でレンズの濁り(グリスニング)が発生しにくいという特性も持っています。

さらに、ビビティには紫外線だけでなく、パソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトをカットするフィルター機能も備わっています。これにより、加齢黄斑変性などの原因となりうる有害な光から、大切な網膜を保護する効果が期待できます。また、光のちらつきを抑え、色の濃淡や輪郭がはっきりと見える「コントラスト感度」の向上にも寄与します。

同シリーズ「クラレオン パンオプティクス」との違い

同じ「クラレオン」シリーズには、「クラレオン パンオプティクス」という非常に優れたレンズも存在します。名前が似ているため混同されがちですが、この2つのレンズは設計思想が根本的に異なり、それぞれに得意な領域があります。

最も大きな違いは「ピントの合い方」です。

クラレオン パンオプティクス:3焦点眼内レンズ

クラレオン パンオプティクスは「遠方」「中間(約60cm)」「近方(約40cm)」の3つの距離に明確な焦点を持つレンズです。光を3点に振り分けることで、遠くの景色から手元のスマートフォンまで、幅広い距離を裸眼で見ることが可能になります。とにかくメガネへの依存度を最大限に減らしたい、という方に適しています。

クラレオン ビビティ:焦点深度拡張型(EDOF)レンズ

遠方から中間距離まで、切れ目なく滑らかにピントが合うレンズです。パンオプティクスほど強い近方視力は得られませんが、その分、光を振り分けることで生じやすいハロー・グレアが非常に少ないという大きなメリットがあります。

まとめると、「利便性のパンオプティクス、見え方の質のビビティ」と考えることができます。手元の細かい文字まで裸眼で見たいならパンオプティクス、夜間の運転などがあり、より自然でクリアな見え方を優先したいならビビティ、というように、ご自身のライフスタイルや何を重視するかによって最適な選択は変わってきます。

クラレオン ビビティの料金

多焦点眼内レンズの種類 金額(税込)
クラレオン ビビティ(乱視なし) 330,000円/片目(税込)
クラレオン ビビティ(乱視あり) 350,000円/片目(税込)

※上記料金は、多焦点眼内レンズの料金です。手術代、診察代・検査代・薬代などは、通常どおり健康保険でのお支払いとなります。

その他の取り扱いレンズと料金については下記ページをご覧ください。

関連ページ:『当院の多焦点眼内レンズについて|岐阜で白内障治療ならくまだ眼科クリニック

クラレオン ビビティが適している患者様

ここまでご紹介してきた特徴を踏まえ、「クラレオン ビビティ」がどのようなライフスタイルやご希望を持つ方に特に適しているのかを具体的に解説します。ご自身が当てはまるか、ぜひチェックしてみてください。

1. 夜間の運転が多い方

光のにじみ(ハロー・グレア)が心配な方ビビティが持つ最大の強みは、ハロー・グレアの発生が単焦点眼内レンズと同程度に抑えられている点です。そのため、お仕事やプライベートで夜間に車を運転する機会が多い方には、非常に安心してお選びいただけるレンズです。

「多焦点レンズにしたいが、夜の見え方が悪くなるのは絶対に避けたい」という方にはビビティを推奨しています。

2. パソコン作業や料理など、中間距離を重視する方

ビビティは、遠方から手元より少し離れた「中間距離」まで、切れ目なく滑らかに見えるのが特徴です。

  • デスクワークでのパソコン作業
  • キッチンでの調理や洗い物
  • カーナビの画面確認
  • スーパーでの値札の確認
  • ゴルフなど、少し離れた場所のスコアカードを見るスポーツ

このような、日常生活で頻繁に発生する「腕を伸ばしたくらいの距離」での作業を、メガネなしで快適に行いたい方に非常に適しています。

3. とにかく「見え方の質」にこだわりたい方

従来の多焦点レンズにあった「焦点の谷間」がなく、ピントが連続的に合うため、非常に自然な見え方を実現します。また、色の濃淡や輪郭がはっきりする「コントラスト感度」も良好です。

風景や芸術作品をクリアに見たい、色の違いをしっかりと認識したいなど、シャープで質の高い見え方を優先したい方にご満足いただける可能性が高いレンズです。

4. 必要に応じて「軽い老眼鏡を使っても良い」と考えられる方

ビビティは近方視力(30cm〜40cm程度)に関しては、3焦点タイプの「パンオプティクス」ほど強くありません。スマートフォンの小さな文字を長時間読んだり、読書をしたり、細かい手芸をしたりする際には、軽い老眼鏡(リーディンググラス)が必要になる場合があります。

「すべての距離を100%裸眼で見たい」というよりは、「日常生活のほとんどをメガネなしで快適に過ごし、必要な時だけ補助的にメガネを使う」という柔軟な考え方ができる方に向いています。

レンズの選定は「私生活」も踏まえて、医師に相談を

クラレオン ビビティは、多くの患者様の生活を豊かにする可能性を秘めた素晴らしいレンズですが、万能ではありません。ご自身のライフスタイルや手術後の見え方に対する希望を、医師としっかりと話し合い、最適なレンズを一緒に見つけていくことが何よりも大切です。

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