【眼科医が教える】角膜潰瘍!コンタクトレンズで失明!

【眼科医が教える】角膜潰瘍!コンタクトレンズで失明!

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

コンタクトレンズで失明?

「コンタクトレンズで失明しますか?」の答えは、「はい!」です。

角膜潰瘍という病気を知っていますか?聞きなれない病気な方が多いでしょう。しかし、コンタクトレンズによる角膜潰瘍で視力を失う、失明するということを知っていますか?

角膜潰瘍とは、黒目(角膜)にばい菌が入り、深い層まで損傷が及ぶ病気で、角膜に濁りを残すことがあります。その濁りの程度や位置により、視力障害の程度は異なります。濁りが黒目の中心に近いほど、視力が下がります。

後遺症である角膜の濁りがとれるのかというと、残念ながらとれません。あまり濁りが強いと、角膜移植手術という大変な治療を受けなければなりません。

ある調査では、角膜潰瘍患者は20代と60代にピークがあり、20代ではコンタクトレンズ使用者が約90%であったと報告されています。

コンタクトレンズの不適切なケアや粗悪なおしゃれ用カラーコンタクトレンズが原因になることが多いため、コンタクトレンズをお使いの方は、是非、知っておきたい病気です。

角膜

角膜とは?

角膜とは、眼球の一番表面にある『黒目』の部分で、目の中に光を取り込む入口にあたり、光を屈折させて眼内へ送り込みます。

角膜の構造

角膜の厚みには個人差がありますが、約0.5㎜です。

外側から順に、以下の5層があります。

角膜上皮

角膜上皮は最も外の層で、表面が涙で保護されています。最も外の層で外界に接していますのでキズが付くリスクが高いです。そのため、角膜上皮細胞は再生修復する能力が高いです。

ボーマン膜

角膜上皮と角膜実質を接着する役割をしています。

角膜実質

角膜潰瘍は、この層まで損傷が及ぶ病気です。角膜実質は角膜全体の厚みの90%を占める最も厚みのある層で、角膜を透明に保つために重要な層です。コラーゲン線維が規則正しく配列することで透明性を維持しています。

デスメ膜

角膜実質と角膜内皮を結び付け、角膜の形を保つ役割をしています。

角膜内皮

角膜内皮は、ポンプ機能があり、余分な水分をくみ出し、角膜の水分量を一定に保つことで角膜の透明性を維持しています。また、前房水(眼球内の水)からの栄養を取り入れて角膜に栄養を与えるという重要な役割も果たしています。

角膜潰瘍とは?

角膜潰瘍とは、角膜実質という深い層まで損傷が及んだ状態です。角膜実質まで損傷されると治りが遅くなるため、角膜に濁りを残して、視力障害を残すことがあります。また、ばい菌の種類によっては失明することもあります。

角膜潰瘍の症状

異物感、痛み、充血、流涙、まぶしさ、視力低下などが起こります。

患者さんの中には、上記症状に加え、「鏡で見て、黒目に白い点がある。」と言われる方がいます。この『黒目に白い点がある。』というのは、角膜の感染症や炎症で出ることが多く、重症な病気が多いため、眼科を早目に受診することをお勧めします。

角膜潰瘍の原因

感染による角膜潰瘍の原因は、細菌、真菌(カビ)、ウイルス、アカントアメーバなどがあります。とりわけ、コンタクトレンズで問題になるのは、細菌とアカントアメーバです。

特に、重症な報告が多いのは、緑膿菌(細菌の一種)とアカントアメーバです。

角膜潰瘍の治療

目薬や眼軟膏や内服薬による治療が必要になります。重症になると、点滴や角膜を削る治療が必要になります。

通院治療が難しいと判断されると、入院治療が必要になります。

コンタクトレンズで、なぜ感染を起こすのか?

コンタクトレンズの不適切な使用

コンタクトレンズの不適切な使用が最も大きな原因です。不適切な使用とは、装用時間が長い、コンタクトレンズを付けたまま寝る、ソフトコンタクトレンズを決められた期間で交換しない、ソフトコンタクトレンズを水道水で洗う、コンタクトレンズケースの不衛生などの行為です。

粗悪なコンタクトレンズの使用

ネット通販や雑貨店で購入した粗悪なコンタクトレンズによる角膜感染症が多くみられます。特に、おしゃれ用カラーコンタクトレンズでの感染には注意が必要です。

洗浄液は、大丈夫か?

1日使い捨てソフトコンタクトレンズを使用している方以外は、ソフトコンタクトレンズ洗浄液を使っている方が多いと思います。

多くの方が、1本ですべてを行ってくれるものを使っていると思います。それは、MPSタイプという薬液です。具体的には、レニュー、オプティフリー、ソフトワン、コンプリートなどという名で売られているものです。MPSタイプは、洗浄、すすぎ、消毒、保存を行うことができる便利なものです。しかし、MPSはばい菌を殺してくれる強い洗浄液なのでしょうか?決して、そうではありません。

もし、そのような強い洗浄液なら、そのまま液がついた状態のコンタクトレンズを目に入れることはできないでしょう。しかし、ばい菌を殺してくれると思っている方は多いのではないでしょうか?MPSは消毒効果が弱く、コンタクトケース内で細菌が増殖し、更に細菌を餌にするアカントアメーバが増殖するという恐ろしいことが起こることがあります。

その汚染されたコンタクトレンズを目につけると、ばい菌が角膜に侵入し、角膜潰瘍が起こります。MPSは、便利な洗浄液ですが、正しい使い方をしないといけません。

下記記事では、コンタクトレンズの不適切な使用でのリスクについて詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。

コンタクトレンズのケア

感染による角膜潰瘍の多くは、コンタクトレンズの不適切なケアが原因になっています。以下のことに気を付けて下さい。

  • ワンデーは1日で捨てる、2Weekは2週間で捨てる。
  • ネットや雑貨店で売られている粗悪なコンタクトレンズに注意する。特に、おしゃれ用カラーコンタクトレンズには注意する。
  • 長時間装用はしない。
  • 寝る時は、コンタクトレンズを外す。
  • コンタクトレンズを扱う前には、手指をセッケンで洗う。
  • コンタクトレンズをこすり洗いをする。
  • ソフトコンタクトレンズは水道水では洗わない。
  • MPSなどのコンタクトレンズ洗浄液を正しく使う。
  • コンタクトレンズケースを洗浄・乾燥させる。
  • コンタクトレンズケースを定期的に交換する。

下記記事では「コンタクトレンズの選び方」について詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。

まとめ

  • コンタクトレンズ使用で、角膜潰瘍という重症な病気を起こすことがあります。
  • 角膜潰瘍は、ばい菌の種類により、失明することがあります。
  • 角膜潰瘍になると、痛みや充血などの症状が出ます。また、『黒目に白い点がある。』というのに気づかれた方は、早目に眼科を受診するとよいでしょう。
  • 角膜潰瘍の治療は、ばい菌の種類によっては、非常に難しいことがあります。入院治療が必要なこともあります。
  • 正しいコンタクトレンズの使い方をすることが重要です。

 

コンタクトレンズをお使いの方は、コンタクトレンズを慎重に選び、コンタクトレンズを正しく使って下さい。そうすることで、角膜潰瘍を予防することができます。しかし、100%予防できるわけではありませんので、充血・痛みなどの症状のある方は、コンタクトレンズの使用を中止し、早目に眼科を受診することをお勧めします。

 

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
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