2022.11.13
「糖尿病性白内障」の特徴は?失明 リスクや手術費用について詳しく解説

この記事の執筆者

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
糖尿病性白内障でお困りの方へ
糖尿病の眼合併症の中で、よく知られているのは、糖尿病網膜症でしょう。
しかし、糖尿病は、さまざまな眼合併症を起こします。
とりわけ、糖尿病では白内障が起こりやすく、糖尿病の方は、糖尿病性白内障の特徴や注意点などを知っておいた方がよいでしょう。
糖尿病性白内障の特徴
糖尿病性白内障は、加齢による白内障に比べ、若い年齢で発症して、進行しやすいという特徴があります。
加齢による白内障は、水晶体が徐々に硬くなって濁ります。しかし、糖尿病性白内障は水晶体が柔らかいままの状態で皮質混濁や後嚢下白内障というスピードの速い濁り方をします。特に、後嚢下白内障は、水晶体の一番後ろがすりガラス状に濁るため、視力低下のスピードが非常に速いです。
糖尿病の眼合併症
糖尿病で最も注意が必要なのは、糖尿病網膜症です。その他、白内障、ぶどう膜炎、視神経萎縮、血管新生緑内障、外眼筋麻痺などを起こします。
ある統計によると、糖尿病患者のうち、糖尿病網膜症は30~40%、白内障は60%、緑内障は1%、外眼筋麻痺は0.2%という報告もあり、白内障は糖尿病の方に、高い確率で起こると言われています。
糖尿病性白内障で失明?
糖尿病性白内障で失明することは、ほとんどありません。糖尿病性白内障は、通常の白内障手術と同じ術式で治療が行えます。
しかし、糖尿病性白内障を放置すると、失明する可能性のある糖尿病網膜症などの別の眼合併症の発見が遅れることがあるため、手術のタイミングは、ご自身の判断だけではなく、医師と相談することが重要です。
糖尿病性白内障の手術リスク
糖尿病の方は、傷が治りにくく、感染しやすいという特徴があります。術後の衛生面の管理は、慎重に行う必要があります。
また、若くして白内障手術をするため、調節という機能を失うため、老眼(ピントが合う距離が狭くなる)になります。多焦点眼内レンズ(遠近両用眼内レンズ)を考える方もいると思います。
糖尿病性白内障の眼内レンズ選択
眼内レンズには、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあります。
単焦点眼内レンズは一定の距離にピントを合わせるのには優れています。多焦点眼内レンズは、見える幅が広いですが、ピントが甘い傾向があります。
若くして、白内障手術をする場合が多いので、多焦点眼内レンズを希望される方が多いかもしれません。眼底に糖尿病網膜症などの異常がなければ、多焦点眼内レンズを選んでもいいかもしれません。
しかし、糖尿病網膜症などの異常がある場合は、多焦点眼内レンズではなく、単焦点眼内レンズで一定の距離を見やすくして、見にくいところはメガネで補った方がいいかもしれません。
眼内レンズの選択は、患者さんのご希望や生活スタイルと目の状態によって決まるので、多焦点眼内レンズをご希望の方は、眼科医とよく相談するとよいでしょう。
白内障手術の費用は、通常の手術費用と同じです。
参考記事※白内障治療の費用は?手術期間やリスクについても徹底解説※
まとめ
- 糖尿病性白内障は、若くして発症することが多く、進行のスピードが速い。
- 糖尿病性白内障は、通常の加齢で起こる白内障と同じ手術です。
- 糖尿病性白内障は適切な時期に手術を行えば、失明することはありません。
- 糖尿病網膜症を合併していることもあり、注意が必要です。
- 糖尿病性白内障の手術は、感染のリスクが高いため、術後の衛生管理が重要です。
- 多焦点眼内レンズをご希望される方は、糖尿病性網膜症の合併がないかなどが重要となるため、眼科医との相談をお勧めします。
この記事の執筆者

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。