白内障手術を受けることを決めて単焦点眼内レンズについて調べてみたものの、「多焦点レンズと何が違うの?」「メガネは本当に必要なの?」と分からないことばかり…という方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、単焦点眼内レンズの基本から、あなたのライフスタイルに合った最適な選び方まで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 単焦点眼内レンズの仕組み
- 単焦点眼内レンズのメリット・デメリット
- ライフスタイル別の選び方
- 術後のメガネ使用シーンと処方のタイミング
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
“単焦点”眼内レンズとは?
単焦点眼内レンズとは、白内障手術で濁った水晶体を取り除いた後に挿入する人工レンズの一種で、遠方(5メートル以上)または近方(30〜40センチ程度)のどちらか一方にだけ焦点が合うように作られているタイプのものです。
単焦点眼内レンズのメリット
単焦点眼内レンズには大きく分けて3つのメリットがあります。それぞれ詳しく解説していきます。
1.ピントがあった部分がクリアに映る
単焦点眼内レンズは、「ピントを合わせた距離」での視界が非常に鮮明です。
多焦点レンズのように光を分割しない(詳しくは「多焦点レンズ」記事で解説しています)ため、コントラスト感度が高く、像がくっきりと見えます。
色の識別や細かい模様もはっきり認識でき、精密な作業や美術鑑賞など「見え方」を重視する方に満足度の高いレンズです。
2.夜間のハロー・グレアがほとんど出ない
多焦点眼内レンズを選択した場合に起こりやすいハロー・グレア現象ですが、単焦点眼内レンズではほとんど起こらないというのもメリットです。
街頭などのライト(光源)が多い夜間でも自然に映ります。
【院長コラム】「ハロー・グレア現象」って何?
ハロー・グレアとは簡単に言ってしまえば、光源を見たときの「引き伸ばされた光」のようなものです。以下に分かりやすくまとめます。
ハロー:光の周りに「輪」が見える現象
グレア:光が長く伸びて、眩しく感じる現象
これがないということは、夜間運転を日常的にされる方、たとえばタクシーやバスの運転手、営業で車移動が多い方にとって大きな利点と言えます。
夜間でもクリアな視界を維持できるため、夜間運転が多い人には多焦点より、単焦点が向くケースが多いです。
3.保険適用で費用負担を抑えられる
多くの方が単焦点眼内レンズを選ばれる理由として、単焦点眼内レンズを用いた白内障手術は公的医療保険が適用されるというものがあります。
3割負担の方で片眼あたり約5万3千円、1割負担なら約1万8千円程度で受けられます。
多焦点眼内レンズは保険適用外になるため、選定療養レンズなら片眼30〜35万円程度、自由診療レンズでは50万円以上かかることもあります。
単焦点の注意点…「メガネが必須になる」こと

単焦点眼内レンズのデメリットとしては、術後もメガネの使用が避けられないという点です。
先述の通り、単焦点眼内レンズはピントが合う距離が1点に限られます。
人工レンズには若い時の水晶体にある調節力がないので、遠方にピントを合わせた場合、近くを見るときにはぼやけますし、近方にピントを合わせた場合は、遠くがはっきり見えません。
手術前からメガネを使っている方にとっては気にならないかもしれませんが、頻繁なメガネの掛け外しが面倒、もともと老眼鏡が辛い、といった方は多焦点レンズを推奨しています。
「遠方or近方」どちらに特化したレンズがおすすめ?
単焦点レンズで遠方と近方のどちらにピントを合わせるべきかは、患者様一人ひとりのライフスタイルによって変わります。それぞれの見え方について解説します。
「遠方合わせ」の見え方
遠方合わせは、おおむね5メートル以遠の遠景にピントが合う設定です。
日常生活で目線を向けるほとんどの距離、たとえば数メートル先のテレビ、部屋の中の時計、道路標識、景色の山並みなどは、メガネなしでクッキリ見えるので、運転など遠くを見る機会が多い人におすすめです。
ただし、手元(30〜50センチ)を見るときはピントが合いづらいです。スマホの文字、新聞の細字、爪切りなどの細かな手元作業は、眼鏡なしでは難しくなります。
近方合わせの見え方
近方合わせは、標準的には30〜40センチ程度の距離に焦点を設定します。
料理中に手元の食材や調味料のラベルを見たり、裁縫で針の穴に糸を通したり、スマホで小さな文字を読むのも裸眼で可能です。
運転をしない方で、読書や手芸が趣味の方、長年強度近視で手元は裸眼で見えていた方に向いています。
ただし、遠方を見るときは焦点が外れます。1メートルを超えるあたりから徐々にピントが甘くなり、2〜3メートル離れると結構見えづらくなるので外出時には必ず遠用メガネが必要になります。
【結論】単焦点なら“普段どこを注視するか”が重要
それぞれの見え方について解説しましたが「遠方合わせ、近方合わせのどちらが良いか?」というのは一概には言えません。
患者様一人ひとりのライフスタイルや、何を優先するかによってベストな選択が変わります。
運転や旅行などアクティブな生活を送る方には遠方合わせが無難なケースが多いですが、ご自宅で過ごすことが多い方や、強度近視で元々近くが裸眼で見えていたのでそれを維持したいという方にとっては近方合わせの方が快適という方もいらっしゃいます。
術前カウンセリングの際に、「車は運転しますか?」「スマホを見る時間は長いですか?」など、生活スタイルを細かく伺った上で提案をさせていただきますが、患者様ご本人が納得して決めることが大切です。
ご自身の生活スタイルを振り返りながら眼科医としっかり相談して選びましょう。
白内障手術と「メガネ」について
ここからは単焦点レンズを選んだ場合に必要になるメガネについて解説します。
メガネが必要になるシーン
メガネが必要になるシーンは、レンズを遠方・近方どちらに合わせたかによって変わります。
遠方合わせ:読書・新聞・スマホ操作・書類を見るなどの「手元の作業」
近方合わせ:車の運転、テレビを見るとき、映画館や劇場など「屋外での活動」
レンズで合わせていない方の視力を補うイメージです。
メガネ装着は「術後1ヶ月」が経過してから
メガネの処方は術後1か月以降が推奨されています。
手術による眼内の変化(傷口の治癒や水晶体嚢の収縮など)が落ち着き、屈折値(度数)が安定するのに約1ヶ月要するからです。
乱視や軽度の浮腫が術後すぐは変動しやすく、早くメガネを作りすぎると度数が合わなくなる可能性があります。
最近の手術は侵襲が少ないので、1カ月を待たずに視力が安定するケースも多いですが、回復力には個人差がありますので、眼科医の指示に従うようにしてください。
くまだ眼科クリニックの白内障治療について

ここまで解説したようにレンズ選びはもちろん大切ですが、大前提、そもそもの治療である「白内障手術の精度」が非常に重要です。
くまだ眼科クリニックでは、安全に白内障手術を受けられるよう以下のサポート体制を整えています。
- 白内障手術を10,000件以上経験した院長がすべての手術を担当
- NGENUITY®やVERIONなど最新の手術システムを完備
- 手術室周辺の「清潔環境」の徹底
- 「日帰り手術」と「無料送迎サービス」で通いやすく
くまだ眼科クリニックでは、治療効果を最大限に発揮するため、NGENUITY®やVERIONなど最新の手術システムを揃え、手術をより安全に行える用意があります。
これまで10,000件以上の白内障手術を執刀してきた院長がすべての手術を担当し、患者様のご負担をできる限り軽減させ、安心して手術に臨める環境づくりに努めています。
単焦点眼内レンズのよくある質問
Q.『単焦点→多焦点』へ入れ替えはできますか?
A.技術的に不可能ではありませんが、基本的に“非推奨”です。
白内障手術で挿入した眼内レンズを後から別のレンズに交換する再手術は、通常の白内障手術に比べリスクが高く、眼内レンズを固定している袋(後嚢)を傷つけ、感染・炎症の危険性が高まります。
「どうしても交換すべき」と眼科医が判断するケース以外は、基本的に行いません。
どうしてもご希望の場合、術後早期であれば交換可能な場合もありますが、原則として眼内レンズは一度入れたら一生使うものとお考えください。
Q.保険適用の範囲はどこまでですか?
A.単焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、術前検査から手術、術後診察まで基本すべて保険適用です。
3割負担の方で片眼あたり約5万3千円、1割負担なら約1万8千円程度で受けられます。
この中には手術前の各種検査費用・手術費・単焦点レンズ代・薬代・術後診察料など全て含まれるので、一般的な白内障手術に関して患者様が窓口で支払うのは保険診療の自己負担分だけです。白内障手術の詳しい料金については以下ページをご覧ください。
Q.「高額療養費制度」は使えますか?
A.はい、条件を満たせば高額療養費制度の対象になります。
高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される制度です。
両眼を同月に手術した方は、自己負担限度額までのお支払いで済むケースが多いですが、白内障手術はこの対象となります。
一生モノのレンズだからこそ「眼科医とのすり合わせ」が必要

ここまで、単焦点眼内レンズの仕組みから特徴、遠方・近方合わせの選び方、術後のメガネ使用まで解説してきました。
単焦点眼内レンズはクリアな見え方と保険適用という大きなメリットがある一方で、一つの距離にしか焦点が合わないため、遠方か近方かのどちらを選ぶかで術後の生活が大きく変わります。
- 単焦点眼内レンズは一つの距離にピントが合う人工レンズで日本では約95%の方が選択
- クリアな見え方、ハロー・グレアが少ない、保険適用で費用負担が少ないのがメリット
- 焦点範囲が限られ、メガネが必要になる点がデメリット
- 遠方合わせは運転や外出が多い方、近方合わせは読書や手芸が多い方に向いている
- 術後のメガネ処方は1ヶ月後が目安
くまだ眼科クリニックでは、10,000件以上の手術実績を持つ院長が、あなたのライフスタイルに合わせた最適なレンズを選定します。もちろん要望があればお伺いし、その上で「これはOK、これは非推奨」と必ずお答えします。
眼内レンズについてさらに詳しく知りたい方、ご自身に合った焦点距離を相談したい方は、まずは一度ご来院いただければと思います。
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