2025.11.03
【合併症について】白内障手術後も「診察を行う理由」について院長が解説
白内障の手術を勧められたものの、合併症と聞くと「もし自分の目が大変なことになったら…」と不安になってしまいますよね。
結論からお伝えすると、白内障手術で失明に至るような重篤な合併症が起こる確率は非常に稀であり、過度に心配する必要はありません。
大切なのはリスクを正しく理解し、万全の対策をとっているクリニックを選ぶことです。
この記事では、白内障手術で起こりうる合併症の種類と、万が一の際の対処法、そして合併症を限りなく少なくにするための当院の取り組みについて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 白内障手術における「合併症」の正しい知識
- 主な合併症の種類
- 合併症ではない、術後の「正常な症状」との見分け方
- 合併症を防ぐ「術後の過ごし方」
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
白内障手術には「合併症リスクある」と聞きました

当クリニックでも、白内障手術を控える方には、僅かながら「合併症のリスクがある」とお伝えしています。ただし合併症というのは少なからず起こるものと、起こってはいけない(早急に対処が必要)なものがあります。
まずは「合併症」という言葉の正確な意味と、白内障手術で実際にそれが起こる可能性についてご説明します。
手術中に起こるものと、術後に起こるものの2種類がある
白内障手術の合併症は、手術中に起こる「術中合併症」と、手術が終わってから一定期間内に起こる「術後合併症」の2つに分けられます。
術中の合併症(手術トラブルによるもの)
手術中に予期せず発生するトラブルのことです。
経験豊富な執刀医は、このような万が一の事態にも冷静に対応できるよう、常に備えています。
術後の合併症(回復時に起こるもの)
手術が無事に終わった後、回復過程で発生する合併症です。 術後の感染や炎症、体の反応などが原因で起こります。
【院長コラム】合併症が“起こる確率”はどのくらい?

まず医療現場において「確率」というのはあくまで集計データによる“目安”であることが前提です。情報の一環であることを念頭におく必要があります。
結論、日本国内で年間120万件以上行われている白内障手術は、現在では手術の成功率が約99%(合併症は約1%未満)と、かなり安全性の高い治療法として確立されています。
もちろん、リスクがゼロになることはありませんが、例えば術後感染症(眼内炎)といった重篤な合併症が起こる確率は数千件に1件程度と極めて低いものです。
だからこそいたずらに怖がるのではなく、どのようなリスクがあり、それにどう対処するのかを正しく知っておくことが大切です。
具体的にどんな合併症がある?
ここからは、白内障手術で起こる可能性のある代表的な合併症を、手術中に起こるものと手術後に起こるものに分けて詳しく見ていきます。
それぞれの症状や原因、万が一の際の治療法まで具体的に解説しますので、正しく理解しましょう。
手術中に起こりうる「偶発(ぐうはつ)症」
まずは手術中に起こる可能性のある偶発的な症状について解説します。
後嚢(こうのう)破損・チン小帯断裂
眼内レンズを支える役割を持つ、水晶体が入っている袋(後嚢)や、それを支える線維(チン小帯)は、もともと非常に細かく弱いため、手術操作によって傷ついてしまうことがあります。
熟練した術者でも、すべてを避けることはできません。
たいていの場合、執刀医がその場で適切に対応することで視力への影響を最小限に抑えられます。
核落下
水晶体の核(中心の硬い部分)が眼の奥にある硝子体(しょうしたい)の中に落下してしまう偶発症です。
この場合は後日、網膜硝子体の専門医による別手術が必要になることがあります。
手術後に起こりうる「合併症」
次に、手術が無事に終わった後に起こる可能性のある合併症について解説します。 術後の正しいセルフケアによって防げるものも多いため、ぜひ参考にしてください。
後発白内障
手術から数ヶ月〜数年経って、眼内レンズを入れた袋(後嚢)が再び濁り、「また霞んで見える…」と感じる状態です。
これはレーザーを使った5分程度の簡単な治療で、すぐに元のクリアな視界に戻すことが可能です。
術後眼内炎(感染症)
頻度は数千件に1件と極めて稀ですが、注意すべき合併症です。
手術の傷口から細菌が入り、目の中で炎症を起こします。 急激な視力低下や目の痛み、充血などが特徴で、緊急の処置が必要となります。
手術室の徹底した衛生管理や術前の入念な消毒、抗菌薬の適切な使用など、感染症を予防するための対策が重要です。
【院長コラム】当クリニックは「徹底した衛生管理」を実施

衛生管理の観点からも、白内障手術を含めたすべての内眼手術は土足禁止の2階で行っております。
手術室には『清浄度クラス10,000/NASA基準、HEPAフィルター』がセットしてあり、空間衛生にも万全を期しております。
もちろん手術を行う環境であれば、こういった衛生管理は当然です。当クリニックでは治療技術・最新設備の導入だけでなく、合併症を防ぐ最新医療にも力を入れています。
一時的な眼圧上昇
手術による炎症などの影響で、一時的に眼圧(目の中の圧力)が上がることがあります。 多くは、自然に眼圧が下がります。場合によっては、眼圧を下げる点眼薬を使用します。
黄斑浮腫
術後の炎症が原因で、網膜の中心部である「黄斑(おうはん)」に水が溜まってむくんでしまい、視力低下や歪みを生じる状態です。多くは、自然に改善します。稀に 注射による治療が必要になります。
眼内レンズのズレ(偏位・脱臼)
手術で目の中に入れた眼内レンズが、元の位置からズレてしまった状態です。
目を強くぶつけるなどの外傷が主な原因で、通常の手術で起こることは非常に稀です。 ズレてしまった場合は、レンズを元の位置に戻したり、入れ替えたりする再手術が必要になります。
その他に起こりうる術後の合併症
その他にも、角膜(黒目)がむくんでしまう「水疱性角膜症」など、さらに頻度の低い合併症がありますが、いずれも発生は非常に稀です。
【問題なしor危険?】手術後によくある症状について

手術の後は、合併症ではなくても一時的に気になる症状が出ることがあります。 ここでは、多くの方が経験する正常な経過と、注意すべき合併症のサインとの見分け方について解説します。
様子を見てよい「正常」な術後症状
手術直後は麻酔や手術の影響で、以下のような症状が出ることがよくあります。
これらは回復過程における正常な反応であることがほとんどで、処方された点眼薬をきちんと使用することで、時間とともに自然と軽快していきます。
- 視界のかすみ: 手術当日は、瞳孔を開く薬の影響もあり、視界がぼんやりしています。
- ゴロゴロ感・異物感: 手術の傷が治る過程で、目が乾いたり、何か入っているような違和感が出たりします。
- 涙が出る: 傷が治る過程で涙の量が増えることがあります。
これらの症状は、通常1週間程度で落ち着いてきます。
すぐに再受診すべき症状
一方で、以下のような症状が現れた場合は、合併症のサインである可能性があります。 次の検診日を待たずに、すぐに当院までご連絡ください。
- 日に日にひどくなる、我慢できないほどの目の痛み
- 急激な視力低下(昨日より明らかに悪化しているなど)
- 視野の一部が欠けて見える
- 目の充血や目やにがどんどんひどくなる
「おかしいな」と感じたら、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
合併症を限りなくゼロにする、くまだ眼科クリニックの対策

ここまで様々な合併症について解説してきましたが、最も大切なのは、こうしたリスクを限りなくゼロに近づけるための取り組みです。
当院では、医師の技術から医療設備、術後のケアに至るまで、患者様に安心して手術を受けていただくための体制を整えています。
10,000件以上の実績を誇る院長の執刀技術
これまで25年以上(執刀数1万件以上)の院長が、すべての白内障手術を執刀します。
豊富な経験に基づき、一人ひとりの目の状態に合わせた丁寧かつ的確な手術を行います。また、看護師や視能訓練士といったスタッフも含めチーム一丸となって患者様をサポートします。
東海圏でも有数の「3D手術システム」による安全性の追求

当院では「NGENUITY(エンジェニュイティ)3Dビジュアルシステム」をはじめとする最新の手術設備を導入しています。
術者は術野を3Dで立体的に、かつ高解像度で確認しながら、従来よりもさらに精密で安全な操作が可能となり、術中合併症のリスクを大幅に低減します。
術後の定期検診も実施
当クリニックに限った話ではありませんが、白内障手術の術後には「定期検診」が不可欠です。
「なぜ手術が問題なかったのに、通院が続くの?」と質問いただくこともありますが、治療の経過観察はもちろん、ここまで紹介した“合併症を発症していないか”の確認でもあります。
そのため、術後も定期的に通院いただくことを患者様にお伝えしているというわけです。
白内障手術の合併症に関するよくある質問
最後に、患者様からよくいただく合併症に関するご質問にお答えします。
Q. 手術で失明する可能性はありますか?
A:現代の医療技術のもと、白内障手術が直接の原因で失明することは、限りなく少ないと考えていただいて大丈夫です。
ただし、先ほど解説した「術後眼内炎」のような重篤な合併症を発症し、治療が大幅に遅れてしまった場合には、視力に後遺症が残る可能性がゼロではありません。 だからこそ、術後の異常に気付いたらすぐに受診していただくことが何よりも重要なのです。
Q. 手術後に思ったより見えないのは失敗ですか?
A:手術後の見え方の回復スピードには個人差があります。 当日から劇的に見えるようになる方もいれば、1週間ほどかけてゆっくりと視力が向上する方もいます。 また、術後1ヶ月ほどは視力が安定しないこともあります。
当院では、術後のピントのズレを最小限に抑えるため、IOLマスター700やVERIONといった高精度な機器で精密な検査・手術計画を行っています。 視力が安定した段階で、必要に応じて最適なメガネを処方することで、より快適な見え方を実現しますのでご安心ください。
Q. 合併症を防ぐために自分でできることはありますか?
A:はい、合併症、特に術後感染症を防ぐために最も大切なのは、患者様ご自身による術後のセルフケアです。
- 処方された点眼薬を、指示通りに使用する
- 目をこすったり、たたいたり、汚れた手で触らない
- 保護メガネを適切に使用し、ほこりや衝撃から眼を守る
- 洗顔や洗髪など、医師の指示を守り、目に水が入らないように注意する
これらの基本的な注意点を守っていただくことが、合併症の最大の予防策となります。
術前検診・術後検査すべてが「合併症対策」に繋がります
この記事では、白内障手術の合併症とリスクを最小限に抑える当院の取り組みまで詳しく解説してきました。
白内障手術は安全性の高い手術ですが、どのような医療行為にもリスクは伴います。 大切なのは、そのリスクを正しく理解し、過度に恐れないこと。 そして、万が一の際に万全の体制で対応してくれる、信頼できる医療機関に任せることです。
- 白内障手術の成功率は非常に高く、重篤な合併症は稀
- 合併症には術中・術後のものがあり、適切な対処法も確立されている
- 術後の異常に早く気付くため、正常な経過との違いを知っておくことが大切
- クリニックの安全対策とご自身の術後ケアが合併症予防のカギ
当院では、最新の3D手術システムを用いて、患者様一人ひとりの不安に寄り添い、安全な手術を提供できるよう全力を尽くします。
合併症に関してさらに詳しく聞きたいことや、ご自身の目のことで心配な点があればお気軽にご相談ください。
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