白内障は失明原因の約3%って本当?失明につながる合併症のリスクまで解説

白内障は失明原因の約3%って本当?失明につながる合併症のリスクまで解説

「白内障と診断されたけどこのまま失明してしまったらどうしよう…」 「親が最近見えにくそうにしていて、白内障の症状が心配…」

白内障と診断を受けて「失明」の不安がよぎったという方も多いのではないでしょうか。大切な目のことだからこそ不安になる気持ちも分かります。

結論からお伝えしますと、現代の日本において、白内障だけが原因で失明に至るケースは極めてまれです。この記事では、白内障患者の方とそのご家族に向けて、眼科医の立場から分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • なぜ日本では、白内障による失明が少ないのか
  • それでも白内障の放置が危険な理由
  • 失明のリスクを回避するために、今あなたができること

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

【大前提】白内障を放置すると失明するの?

現在の日本において「白内障だけ」が原因で失明に至ることは非常に稀ですが、症状を「放置」してしまうと別の目の疾患、いわゆる合併症によって失明に至るケースがあります。

まずは白内障と日本における「失明リスクの関係性」について解説します。

白内障の失明率は「約3%」とごく稀

厚生労働省が行った調査によると、日本における失明原因のうち、白内障が占める割合は約3%に過ぎません。これは、緑内障(約20%)や糖尿病網膜症(約19%)といった他の病気と比べると、かなり低い数字です。

世界に目を向けると、白内障は今なお失明原因のトップであり、全体の約半数を占めるともいわれていますが、日本には優れた医療保険制度があり、安全で効果的な白内障手術が広く普及しているため、多くの方が失明に至る前に手術を受け、視力を取り戻すことができています。

失明につながる要因は「合併症」

日本でも失明につながる危険があるのは白内障による「合併症」です。

白内障を長期間放置してしまった結果、他の深刻な目の病気(合併症)を引き起こしてしまったり、もともと併発していた病気の発見が遅れてしまったりすることが、失明の引き金になります。

ここからは、その危険な合併症について具体的に解説します。

白内障患者が併発しやすい合併症

特に白内障と関連が深く、失明リスクを注意するべき4つの代表的な病気について解説します。

1:「緑内障」による合併症

緑内障は日本における中途失明原因の第1位を占める、最も注意すべき疾患です。

白内障が進行して水晶体が膨張し硬くなると、目の中を循環している房水という液体の流れ道を塞いでしまうことがあります。その結果、「閉塞隅角緑内障」や眼圧が急激に上昇する「急性緑内障発作」を引き起こす危険性があります。

特に急性緑内障発作は、激しい目の痛みや頭痛、吐き気などを伴い、短時間で視野が欠け、治療が遅れると失明に至ることもある非常に怖い状態です。白内障を放置すればするほど、この急性緑内障発作のリスクは高まっていきます。

また、急性の発作だけでなく、自覚症状のないままゆっくりと進行する慢性の緑内障も、白内障の検査で偶然発見されることが少なくありません。白内障手術で水晶体を取り除くことは、急性緑内障発作の予防にも繋がります。

2:「ぶどう膜炎」による合併症

ぶどう膜炎は、目の中の「ぶどう膜」とよばれる組織(虹彩・毛様体・脈絡膜)に炎症が起きる病気の総称です。

白内障が末期の状態(過熟白内障)まで進行すると、硬くなった水晶体からタンパク質成分が漏れ出し、それに対するアレルギー反応として目の中に激しい炎症が起こることがあります。これを「水晶体融解性ぶどう膜炎」と呼びます。

この状態になると、強い目の痛みや充血、著しい視力低下をきたし、緊急で手術が必要になります。もし治療が遅れると、炎症が網膜や視神経にまで広がり、手術をしても視力が十分に回復しないリスクが高まります。

3:「糖尿病」による合併症(糖尿病網膜症)

そもそも糖尿病を患っている方はそうでない方に比べて白内障を発症しやすい傾向にありますが、合併症の糖尿病網膜症は日本人の中途失明原因の第2位を占める病気です。

糖尿病網膜症は初期では自覚症状はあまり出ません。自覚症状が出る頃には進行している場合が多いです。糖尿病網膜症とは、網膜(カメラでいうフイルム)が障害される病気です。発見が遅れると、網膜がもとに戻らなくなります。

最近は、糖尿病網膜症の治療は非常に進歩しています。進行した糖尿病網膜症でも、かなり回復の見込みがありますが、良い視力を得ようとするには早期発見・早期治療が最も重要です。

糖尿病網膜症は、初期には自覚症状がありませんので、糖尿病を患っている方は症状がなくても定期受診をしていただくことをお勧めします。

関連ページ:『糖尿病網膜症|岐阜市で白内障治療はくまだ眼科クリニック

4:「網膜色素変性症」による合併症

網膜色素変性症は、網膜の視細胞が少しずつ失われていく遺伝性の病気です。初期症状として夜盲(暗いところで見えにくい)、進行すると視野が狭くなるのが特徴です。

この病気の方は、比較的若い年齢から白内障を合併するケースが多いです。網膜色素変性症そのものに対する根本的な治療法はまだ確立されていませんが、合併した白内障を手術で取り除くことで、残された中心部分の視力が改善する場合があります。

参考:『こんな見え方の場合は網膜色素変性症かも?具体的な症状や原因、治療法を解説|先先進会眼科

白内障は「早期発見」が最も大切

ここまで様々なリスクについてお話ししましたが、ご自身の目の変化に気づき、適切なタイミングで病院を受診すれば過度に心配しすぎる必要はありません。

白内障セルフチェック

以下のような症状に心当たりはありませんか?まずはご自身やご家族の目の状態を、一度セルフチェックしてみましょう。

  • 視界が全体的にかすんだり、ぼやけて見える
  • 太陽の光や車のヘッドライトが、以前より異常にまぶしく感じる
  • 片方の目だけで見ると、物が二重、三重にダブって見える
  • 眼鏡やコンタクトの度数が、短期間で合わなくなった
  • 薄暗い場所や夜間に、物が見えにくくなった
  • 色の違いが分かりにくく、全体的に黄ばんだように見える
  • 眼鏡をかけても、視力検査で良い視力が出ない

これらの項目に一つでも当てはまるものがあれば、白内障が始まっている、あるいは進行している可能性があります。

一度、眼科で詳しい検査を受けてみることをお勧めします。

受診タイミングは「見え方に変化を感じたら」

セルフチェックに当てはまったからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。

  • 車の運転で、標識や信号が見えにくく不安を感じる
  • 新聞や本の文字が読みにくく、読書を楽しめなくなった
  • 趣味のゴルフや手芸などで、細かいところが見えづらい
  • 夜間の外出で、階段や段差でつまずきそうになる

など、日常の見え方に違和感を感じたタイミングで受診するようにしてください。

白内障は治療によって改善できる病気です。このような不便さを感じ始めたら「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、まずは眼科医に相談してください。

白内障の治療方法は?手術を受けなくても良い?

とはいえ白内障と診断されたら、どのような治療を行うのか気になるかと思います。ここでは、治療の基本的な考え方についてお話しします。

根本治療は「手術のみ」

まず知っておいていただきたい大切なことは、一度濁ってしまった水晶体は、元の透明な状態に戻すことはできないということです。

点眼薬は「進行を抑えるもの(完治はできない)」

白内障の初期に使われる点眼薬は、あくまで水晶体の濁りの進行を「遅らせる」ことを目的としたもので、視力を回復させたり、濁りを取り除いたりする効果はありません。

生活習慣の改善やサプリメントなども同様で、進行した白内障を治すことはできません。白内障を根本的に治療し、視界を取り戻すためには手術が選択肢となります。

白内障手術は、濁った水晶体を取り出し、その代わりに人工の「眼内レンズ」を挿入するものです。手術は片目あたり10分程度、日帰りで完結します。

当クリニックは「1万件以上」の実績を持つ院長が手術を担当

大切な目の手術だからこそ、確かな技術と豊富な経験を持つ医師に任せたいと考えるのは当然のことです。当院では、すべての白内障手術を院長である私がすべて執刀しています。

また単に「見える」ようにするだけでなく、手術後の「見え方の質」にまでこだわり、患者様が心から「手術を受けて良かった」と感じていただくことを目指しています。。

東海エリアでも数少ない「最新の手術機器」を導入

治療効果を最大限に発揮するための最先端の診療システムを導入しており、ベリオンやlOLマスター700などの医療機器を用いて、術後屈折誤差を減らすこと、精度の高い乱視矯正をすることなどを、すべての白内障手術で行っています。

手術は、NGENUITY(エンジェニュイティ)3Dビジュアルシステムを使うことで、顕微鏡の約1.5倍の拡大率、約5倍の奥行きを観察し、手術場面に合わせた色合いをカスタマイズすることで、手術をより安全に行えるようにしています。

当クリニックでは「少しでも白内障で悩む方を減らしたい・最新の医療を提案したい」という思いから、個人医院ではありますが最新の医療設備を導入しています。

関連ページ:『白内障について|岐阜市で白内障手術はくまだ眼科クリニック

白内障手術には「眼内レンズ」が必要

白内障手術は、濁った水晶体の代わりになる人工の「眼内レンズ」の選択が、手術後の見え方や満足度を大きく左右する重要なポイントになります。

眼内レンズは、一度目の中に入れたら生涯にわたって使い続ける「第二の水晶体」です。どのようなレンズを選ぶかで、手術後の生活が大きく変わるといっても過言ではありません。

レンズには、一つの距離にピントが合う「単焦点眼内レンズ」と、複数の距離にピントが合う「多焦点眼内レンズ」があります。

運転をよくする方、手元の細かい作業が多い方など、ライフスタイルによって最適なレンズは異なります。当院では患者様一人ひとりのご要望にお応えするため、豊富な多焦点眼内レンズを取り揃えていますので、お気軽にご相談ください。

関連ページ:『当院の眼内レンズについて|岐阜市で白内障手術はくまだ眼科クリニック

当院の「白内障検査の流れ」について

①視力検査

一般的な視力検査です。裸眼での視力と、眼鏡やコンタクトレンズをつけた状態での「矯正視力」を測ります。

②眼圧検査

「眼球の硬さ」を測る検査です。緑内障など他の病気がないかを確認するための大切な検査です。

③細隙灯顕微鏡検査

顕微鏡を使って、医師が直接あなたの目を観察します。ここで、水晶体がどの程度濁っているかを詳しくチェックします。

④眼底検査

散瞳薬を使って瞳孔を開き、目の奥(網膜)の状態を詳しく調べます。

⑤OCT検査

網膜や視神経の断面を撮影して解析します。今まで人間の目ではわからなかった微細な病変も見逃しません。

⑥角膜内皮細胞検査

角膜を透明に保つ「角膜内皮細胞」は一度減ると元には戻りません。手術に十分耐えられるだけの細胞数があるかを検査します。

⑦眼軸長検査

眼軸長(目の長さ)、角膜の屈折力、前房深度を測ります。その値を使って、内臓されている計算式で眼内レンズ度数を計算します。当院では「IOLマスター700」という、精度の高い医療機器を用いて検査しています。

⑧べリオン

乱視矯正・切開位置、眼内レンズの中心固定などを行うのに必要な検査です。検査結果は、手術中のモニター(NGENUITY『エンジュニュイティ』 3D ビジュアルシステム)にリアルタイムで映し出され、眼内レンズを入れる位置などを正確にガイドしてくれるシステムです。

これらの検査結果を総合的に判断し、医師が白内障の進行度や、今後の治療方針について丁寧に説明します。受診したからといって、すぐに手術を勧められるわけではありません。

あなたの目の状態と、生活の不便さの度合いに応じて、点眼薬で進行を遅らせながら経過を見ていくのか、あるいは手術を検討するのかを、一緒に相談しながら決めていきます。

まとめ:失明につながる“可能性”があるからこそ、早期受診が大切

ここまで白内障そのものが原因で失明することは稀とお伝えしましたが、放置すると合併症によって失明の可能性があることもお伝えしてきました。結論、この記事でお伝えしたいのは「白内障は正しく知れば過度に恐れる心配はない病気」ということです。

  • 白内障での失明は稀: 日本での失明率は約3%と低い。
  • 本当のリスクは合併症: 放置すると緑内障やぶどう膜炎を引き起こす可能性がある。
  • 早期発見が鍵: 「生活の不便さ」を感じたら、受診のサイン。
  • 治療法は手術のみ: 点眼薬では治らないが、手術で視力は回復できる。
  • 手術は安全: 経験豊富な専門医のもと、安全性の高い手術が広く行われている。

本記事でもお伝えしたような白内障の予兆やセルフチェックの方法も踏まえて、もし少しでも不安に感じることがあれば、まずは眼科を受診してください。

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