白内障手術を控えて「どの眼内レンズが自分に合うのか」と迷う方は少なくありません。
費用の違いや見え方の違いが分かりにくく、一生に一度の手術だからこそ慎重に選びたい、と考えるのは当然のことです。
結論から申し上げますと、眼内レンズの選び方は患者様のライフスタイルによって変わります。医師と相談して決めるものですので、患者様自身が深く考え込む必要はありません。
この記事では、患者様の生活に合わせた眼内レンズの選び方を解説します。
この記事でわかること
- 「単焦点」と「多焦点」の基本的な違い
- ライフスタイル別の推奨
- くまだ眼科で選べる眼内レンズ
この記事の執筆者
熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。
目次
そもそも「眼内レンズ」とは?

眼内レンズとは、白内障によって濁ってしまった水晶体の代わりに挿入する人工レンズのことを指します。
人間の目でカメラのレンズにあたる水晶体が濁るため、これを取り除いて透明な人工レンズに置き換えます。一度挿入すると基本的に交換する必要はなく、半永久的に使い続けられるレンズですが、焦点の合わせ方によっていくつかの種類があり、それぞれ見え方や費用が異なります。
眼内レンズの種類は大きく2つ
一口に眼内レンズと言っても、「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類に大きく分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
単焦点眼内レンズ:1つの距離にピントが合う
単焦点眼内レンズは、遠方もしくは近方どちらか1つにピントを合わせるレンズです。
保険適用されるので費用を抑えることができるのが利点ですが、どちらかの視力を補うために手術後はメガネが必要になります。
多少の不便さはありますが、見え方の鮮明さでは多焦点より優れているので、安価だからといってレンズの質が悪いわけではありません。
多焦点眼内レンズ:複数の距離にピントが合う
一方で多焦点眼内レンズは、複数の距離にピントを合わせるレンズです。
単焦点レンズよりは高額になりますが、日常生活の大半をメガネなしで過ごせるようになります。
夜間にハロー・グレア(視界に光の輪が見える現象)が出やすいのが欠点でしたが、近年では改良が進み、焦点深度拡張型(EDOF)などのハロー・グレアが出にくいレンズも登場しています。
単焦点と多焦点の比較表
| 単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ | |
|---|---|---|
| 焦点の数 | 1つ(遠方または近方) | 複数(遠+近、遠+中+近など) |
| 費用 | 保険適用(3割負担) | 選定療養:片眼30万円~ 自由診療:片眼50万円~ |
| メリット |
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| デメリット |
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最適な眼内レンズは患者様によって異なります
ここまで単焦点と多焦点それぞれの特徴を解説してきましたが、「どちらを選ぶべきか?」は患者様本人のライフスタイルや何を重視するかによって異なります。
ここではそれぞれのレンズに向いている方の特徴をまとめました。
単焦点眼内レンズはこんな方におすすめ
単焦点眼内レンズをおすすめする方は以下の通りです。
費用を抑えたい方
まず第一に、保険適用で費用を抑えられる単焦点眼内レンズは経済的な負担を軽減したい方に適しています。
費用を抑えたい方や、遠くが見えれば十分という方には単焦点が向いていますし、費用対効果を考えて「保険で十分」と判断するのも良い方法です。
メガネをかけることに抵抗がない方なら、単焦点でも十分でしょう。
クリアな見え方を重視する方
単焦点眼内レンズは、多焦点眼内レンズよりもクリアな視力が得られます。
コントラストが高くくっきりと見えるため、色の違いや細かい形の判別がしやすいのが特徴です。
また、夜間のハロー・グレアが少なく、夜間視力も良好なので、当院では運転が多い方や、裁縫や機械いじりなど細かい作業が伴う趣味をお持ちの方におすすめすることが多いです。
多焦点眼内レンズはこんな方におすすめです
対して、多焦点眼内レンズがおすすめの方は以下の通りです。
メガネの使用を減らしたい方
多焦点眼内レンズを選ぶと、メガネ依存度がかなり下がります。
料理中にレシピ本を見るたびメガネを掛け外しするのが面倒、買い物で値段やスマホ確認に老眼鏡が必要になるのが煩わしい、といった方にも多焦点は向いています。
ただし、細かい文字を読むときや暗い場所などでメガネが必要になるケースもゼロではない点はご理解ください。
アクティブな生活を送る方
多焦点眼内レンズの仕組み上、さまざまな距離を見る機会が多い方に適しています。
ゴルフなどのスポーツや旅行が趣味の方など、無意識のうちに目線を大きく動かす生活というのは案外珍しいものではありません。
当院ではこうした遠近両用で生活が楽になり、メガネが邪魔になる場面が多いアクティブな方には多焦点をお勧めすることが多いです。
当院では「術前診察」で最適なレンズをご案内します

くまだ眼科クリニックでは平成26年より、多くの患者様に多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を施行してきました。
「2焦点」「3焦点」「5焦点」の回折型多焦点眼内レンズ、ハロー・グレアが少ない焦点深度拡張型眼内レンズ(EDOF多焦点眼内レンズ)など豊富なラインナップで多くの患者様にご満足いただける治療をご用意しています。
眼内レンズの選び方でよくある質問
眼内レンズ選びでよくある質問をまとめました。
Q. 多焦点レンズを選ぶとメガネは不要になりますか?
A.多焦点レンズはメガネへの依存度を大きく減らせますが、完全に不要になるとは限りません。
約7割の方が全く不要になったという報告もありますが、細かい文字を読むときや暗い場所ではメガネが必要になる場合もあります。
とはいえ、日常生活の多くの場面でメガネなしで過ごせるようになる方が多いです。
Q. 乱視がある場合はどうなりますか?
A.乱視がある方には、乱視矯正機能付きレンズ(トーリック眼内レンズ)という選択肢があります。
単焦点・多焦点どちらにもトーリックタイプがあり、白内障手術を受けることで乱視も矯正することができます。ただし、追加費用がかかる場合があるので詳しくは診察時にご相談ください。
医師と相談しながら、あなたに最適な眼内レンズを選びましょう
この記事では、白内障手術における眼内レンズの選び方について解説してきました。
単焦点は費用を抑えてクリアな見え方が得られ、多焦点はメガネへの依存度が下がるという違いがありますが、どちらもそれぞれのメリットがあり、患者様のライフスタイルによって最適なレンズは変わります。
この記事のポイント
- 単焦点は保険適用で費用が安く、もっともクリアな視力が得られる
- 多焦点は費用が高額だが、メガネへの依存度を大きく減らせる
- 費用を抑えたい方、クリアな見え方を重視する方には単焦点が向いている
- メガネの使用を減らしたい方、アクティブな生活を送る方には多焦点が向いている
くまだ眼科クリニックでは、患者様のライフスタイルを丁寧にお聞きしながら、単焦点・2焦点・3焦点・5焦点・EDOFなど豊富な取り扱いの中から、あなたに合ったレンズをご提案します。
術前のレンズ選定も踏まえて、何か不安なことがあれば眼科医に相談するようにしましょう。
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