その日に“即手術”はない?「白内障手術の流れ」を当院治療を参考に解説

その日に“即手術”はない?「白内障手術の流れ」を当院治療を参考に解説

「白内障の手術が必要です」と医師から伝えられたものの、“目の手術”と聞いて不安に感じていませんか。

手術そのものはもちろん、準備や入院の有無、術後の生活まで、気になることは多いと思いますが、実は、現在の白内障手術は非常に安全性が高く、手術自体は10分程度で終わることがほとんどです。

この記事では、白内障手術の全体像を正しく理解し、安心して治療いただくために、以下の点を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 白内障手術の全体の流れ(術前検査・手術当日・術後の診察)
  • 手術当日の所要時間(来院から帰宅まで)
  • 術後の生活で気をつけるべきこと
  • 多くの方が抱く疑問とその回答

この記事の執筆者

熊田充起

熊田充起 くまだ眼科クリニック 院長

岐阜県岐阜市出身。関西医科大学卒。岐阜大学医学部眼科学教室に入局後、5つの総合病院に勤務し眼科手術などの経験を積む。平成20年に生まれ育った岐阜市に「くまだ眼科クリニック」を開院。
常日頃意識しているのは、「治す眼科医療」をめざすこと。日帰りでの白内障手術を数多く手がけるほか、緑内障の早期発見や小児眼科など、幅広い患者様のニーズに対応。

そもそも白内障手術とは?

白内障手術は「超音波水晶体乳化吸引術」と呼ばれるもので、白内障によって濁ってしまった「水晶体」を取り除き、代わりとなる人工の「眼内レンズ」を挿入することで白内障を根本的に治す治療方法です。

手術は目薬による局所麻酔(点眼麻酔)でおこなうため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。 また、手術そのものにかかる時間は片眼あたり10分程度と非常に短いものです。

白内障手術の所要時間はどのくらい?

白内障手術そのものにかかる時間は10分程度と非常に短いですが、手術前の準備や術後の休憩などを含めると、全体の所要時間は変わってきます。

ここでは「日帰り」と「入院」のケースに分けて解説します。

日帰り手術の場合:来院から2〜3時間

当院では、患者様の身体的・時間的なご負担を少しでも減らすため、日帰りでの白内障手術を基本としています。

手術当日は約1~2時間前にご来院いただき、手術の準備を始めます。 手術自体は約10分で終わり、その後は回復室でお休みいただきます。 お体の状態に問題がないことを確認できたら、そのままご帰宅となります。

入院が必要な場合:1泊2日程度

基本的には日帰りで完結する手術ですが、患者様の状況によっては入院での手術が望ましいケースもあります。 その場合の入院期間は、1泊2日程度が目安です。

入院が必要なケースとは?

日帰り手術が基本とはいえ、たとえば以下のような場合には入院が検討されることがあります。

  • 重度の全身疾患があり、経過を入院でみる必要がある方
  • ご高齢で一人暮らしをされており、術後のご自身での管理に不安がある方
  • ご自宅が遠方で、術後すぐの通院が難しい方

白内障手術はどんな流れで進むの?

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ここからは、白内障手術の具体的な流れを「術前」「手術当日」「術後」の3つの段階に分けて、さらに詳しく解説します。

【術前】手術の精度を高める2回の検査

安全性の高い手術とはいえ、念入りな術前の準備があってこそ成り立ちます。

当院ではまず、患者様一人ひとりに最適な眼内レンズ(水晶体の代わりに入れるレンズ)を選ぶため、手術日とは別に合計2回、術前検査にお越しいただいています。

目の状態は、その日の体調などによっても微妙に変化することがあるため、複数回検査することで、より正確なデータを取得します。

1回目:一般眼科検査・血液検査

最初にご来院いただいた際には、手術が可能かどうかを判断するための基本的な目の検査と、全身の状態を確認するための血液検査をします。

  • 一般眼科検査:視力や眼圧の測定、顕微鏡を使った診察で、白内障の進行具合や他の目の病気の有無などを詳しく調べます。
  • 度数測定:通常の検査に加え、角膜の細胞数を調べる検査や、「IOLマスター700」「ベリオン」といった最新機器を用いて、眼内レンズの度数や乱視の角度などを精密に測定・解析します。
  • 血液検査:採血を行い、手術に影響するような全身の状態でないかを確認します。

2回目:最終的なレンズ度数の決定・手術説明

2回目のご来院時には、より手術に特化した検査と、最終的なご説明をします。

  • 再検査:眼内レンズの精度をさらに高めるため、「IOLマスター700」と「ベリオン」による検査を再度おこない、1回目のデータと合わせて度数を決定します。
  • 涙のう洗浄:涙の通り道に詰まりがないかを確認しながら洗浄します。術後の感染症を防ぐための大切な処置です。
  • 手術説明:すべての検査結果をもとに、医師から手術内容について、看護師から術後の生活上の注意点について、それぞれ詳しくご説明します。

【手術当日】ご来院からご帰宅までの流れ

ここからは手術当日の流れについて解説します。当院での手術は「毎週水曜日の午後」に行っています。

1. ご来院・手術準備(点眼麻酔など)

手術予定時刻の約1~2時間前にご来院いただきます。

まずは血圧測定などをし、その日の体調を確認した後、手術の準備として、瞳孔を広げる「散瞳薬」と感染予防の「抗菌薬」を、時間をかけて複数回点眼します。

手術室に入る直前には、痛みを感じなくするための麻酔薬を点眼します。

2. 濁った水晶体の除去

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手術台に仰向けに寝ていただき、目の周りを消毒します。 手術は、超音波の機械を使って行います。

まず、黒目の縁を2ミリほど小さく切開し、そこから器具を挿入して、濁った水晶体を細かく砕きながらきれいに吸い出します。

水晶体の中身がきれいになったら、折りたたんだ状態の小さな眼内レンズを挿入します。

レンズは目の中でゆっくりと広がり、正しい位置に固定されます。 切開創は非常に小さいため、縫い合わせる必要はなく、自然に閉じます。 これで手術は完了です。

3. ご帰宅

手術が終わったら、回復室へ移動し、ゆっくりお休みいただきます。 看護師が体調に変化がないかを確認し、問題がなければ、ご帰宅となります。 ご帰宅の際には、処方される目薬などをお渡しします。

【術後】感染症を防ぐための通院

手術が無事に終わっても、それで治療が完了というわけではありません。 術後の目が順調に回復しているかを確認し、万が一のトラブルに備えるため、術後の診察がとても大切です。

当院では、患者様に安心していただくために、手術の翌日から3日間ご来院いただき、目の状態をチェックしています。

感染症など重篤な合併症の兆候がないかを慎重に確認します。 診察で問題がなければ、その後は1週間後…と、少しずつ通院の間隔をあけていきます。

術後はどう過ごせばいい?日常生活の注意点

手術でクリアな視界を手に入れても、その後の過ごし方によっては、感染症などのトラブルを引き起こす可能性があります。

視力が安定し、安全に日常生活に戻るために、術後のケアはとても大切です。 ここでは、術後の検診と生活上の注意点について解説します。

合併症を防ぐために定期検診は必ず受けましょう

術後の定期検診は目の傷が順調に治っているか、感染症や眼圧の上昇といった合併症が起こっていないかを確認するために絶対に欠かせないものです

「よく見えるようになったから」と自己判断で通院をやめてしまうのは非常に危険です。

当院では、手術翌日からの3日間連続の診察の後も、1週間後、2週間後、1ヶ月後と、目の状態が完全に落ち着くまで定期的に診察します。「術後のケアまでが手術の一部」と考え、医師の指示があるまでは必ず通院を続けるようにしてください。

術後の生活における注意点

手術後のデリケートな目を守るため、日常生活ではいくつか注意していただきたい点があります。特に重要なのは「目に水を入れないこと」と「目をこすったり、押さえたりしないこと」の2つです。

薬について

術後は、感染予防と炎症を抑えるために3種類ほどの目薬を処方します。

処方された薬は、医師の指示通りの回数と期間、必ず使用してください。 ご自身の判断で点眼をやめてしまうと、後から炎症がぶり返すこともあるため注意が必要です。 また、感染予防のための飲み薬も3日間処方されますので、こちらもしっかりと飲み切ってください。

趣向品・運動について

  • お酒・タバコ:アルコールは血行を良くし、目の充血や炎症を助長する可能性があるため、手術当日はお控えください。タバコの煙も目に刺激となりますので、術後しばらくは禁煙が望ましいです。
  • 運動:散歩など軽い運動は数日後から可能ですが、重い物を持つ、激しく息むなど、目に圧力がかかる運動は、術後1ヶ月間は避けてください。
  • 運転:術後しばらくは見え方が安定しないため、車の運転は最低1週間はお控えください。再開する際は、必ず医師の許可を得てからにしましょう。

清潔について

  • 入浴:手術の翌日から、首から下のシャワーは可能です。
  • 洗顔・洗髪:目に水や石鹸が入るのを防ぐため、手術から3日間は禁止です。顔は濡れタオルで拭く程度にし、髪の毛は美容院で上向きに洗ってもらうなどの工夫をおすすめします。当院では、洗髪時に使える防水のアイパッチもご用意しています。
  • 化粧:アイメイク(アイシャドウ、マスカラなど)は、目に化粧品の粉が入るリスクがあるため、最低1〜2週間は控えてください。

術後のメガネについて

手術で単焦点の眼内レンズを選んだ場合、遠くか近くのどちらか一方にピントが合うようになります。 そのため、これまでと見え方が変わり、生活に合わせて新しいメガネが必要になることがほとんどです。

視力が安定する術後1ヶ月頃を目安に新しいメガネを処方しますので、まずは新しい見え方に慣れていきましょう。

白内障手術の流れに関するよくあるご質問

最後に、白内障手術の「流れ」に関して、患者様からよくいただくご質問にお答えします。

Q. 検査で白内障と診断されたら、その日に手術になりますか?

A. いいえ、診断されたその日に手術することはありません。

安全な手術のためには、複数回の精密な検査が必要です。 また、当院の手術日は毎週水曜日の午後と決まっているため、患者様のご都合も伺いながら、手術日を決定する流れとなります。

Q. 日帰りの場合、付き添いや迎えは必要ですか?

A. 基本的には付き添いいただくことが望ましいです。

手術当日は、ご自身で車や自転車を運転して帰ることはできません。 ご家族の方にお迎えに来ていただくか、ご自宅までお送りする当院の無料送迎サービス(事前予約制)をご利用ください。

Q. 手術はどのような体勢で受けますか?

A. 仰向けに寝た姿勢で受けていただきます。

手術台はリクライニングしますので、楽な姿勢で受けることができます。 また、腰や首が痛い方には、クッションを使うなどして、負担がかからないよう調整しますのでご安心ください。

Q. 手術後、いつから仕事に復帰できますか?

A. お仕事の内容によって異なります。

デスクワークなどの事務作業であれば、術後の3日間の通院が終わった4日目あたりから復帰される方が多いです。 一方、力仕事や、ほこりの多い屋外での作業などは、目に負担がかかるため、1〜2週間以上はしっかりお休みいただくのが安全です。 詳しくは医師にご相談ください。

負担の少ない治療だからこそ、「手術の流れ」の把握も大切

この記事では、白内障手術の術前から術後までの一連の流れについて、詳しく解説してきました。

手術と聞くと不安が先に立ってしまうかもしれませんが、どのような手順で、どのくらいの時間をかけておこなわれるのかを具体的に知ることで、その不安は大きく和らぐはずです。

  • 白内障手術は「術前」「当日」「術後」の3段階で計画的に進められる
  • 手術自体は10分程度と短く、日帰り(滞在2〜3時間)で受けられる
  • 術後の生活も、いくつかの注意点を守れば、過度に恐れる必要はない
  • 不安や疑問は、事前の診察で解消しておくことが大切

くまだ眼科クリニックでは、こうした安全な手術の流れを基本としながら、10,000件以上の執刀経験を持つ院長が、お一人おひとりの目の状態やライフスタイルに合わせ、最適な治療をご提案します。

白内障やその治療法についてさらに詳しく知りたい、あるいはご自身の状況について相談したいという方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。

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