涙は、外側より油層・水層・ムチン層の「3層」からできています。
ドライアイについて
ドライアイと涙の関係
1.涙の構造
1.油層
乾燥しないように目を守っています。涙の層の約1%という非常に薄い層です。上下まぶたにあるマイボーム腺から分泌されます。マイボーム腺の出口(開口部)は、まつ毛の生え際にあります。
2.水層
涙の大部分を占め、目に酸素や栄養を送っています。目尻の上まぶたの裏にある涙腺から分泌されます。
3.ムチン層
角膜に接していて涙を目にとどまらせる働きをしています。結膜にある杯細胞(ゴブレット細胞)から分泌されます。
2.涙が流れるしくみ
涙は瞬目(まばたき)により目を潤した後、上下の涙点に吸収され、鼻腔の方へ流れ出ます。
ドライアイか
チェックするには?
ドライアイの症状は人によってさまざまです。
以下で当てはまるものが“5つ以上”ある場合、ドライアイの可能性がありますので眼科を受診するようにしてください。
ドライアイを放置すると
どうなる?
染色検査時の目の表面
正常
症状なし きれいに見える
ドライアイでキズがついた角膜
ゴロゴロする、痛い、乾く、見えにくい、かすむ、まぶしい…など
ドライアイは放置し続けると、角膜の損傷を引き起こし、視力低下などの原因になります。
特に角膜損傷は、ご自身で気づかないことがありますので、悪化する前に眼科受診をお勧めします。
ドライアイの原因

涙の3層のどの層に障害が出ても、ドライアイの症状が出ます。
昔はドライアイは涙腺から分泌される水層の異常と考えられていました。
しかし、近年はマイボーム腺機能不全(MGD)により油の分泌が減る油層の異常が1番の原因であることがわかっています。
ドライアイの中で、水層が足りないタイプが約14%、油層が足りないタイプが約50%、水層も油層も足りないタイプが約36%という報告があります。
よって、ドライアイの約86%が油層に異常があり、マイボーム腺機能不全(MGD)が大きく関与していると考えられています。
ドライアイの検査

1.BUT
(BreakUpTime)
フルオレセイン(黄色い液)で涙を染めて、 スリットランプと呼ばれる顕微鏡で観察します。まばたきを止めて、涙の層が壊れるまでの時間(BreakUpTime)を測ります。 正常は10秒以上で、異常が5秒以下です。

2.シルマー試験
下のまぶたの内側に目盛りの付いたろ紙を挟み、濡れる長さを測ります。
正常は10mm以上、異常は5mm以下、5~10mmは境界値です。
ドライアイのリスクと対策方法
コンタクトレンズの装用
コンタクトレンズは涙の層を分断するだけでなく、コンタクトレンズが涙を過剰に吸収して蒸発を促進します。
ドライアイの方は、「低含水」や「シリコーンハイドロゲル素材」のレンズを選ぶといいでしょう。低含水レンズはコンタクトレンズに含まれる水分が少ないため、レンズに吸収されて蒸発する水分が減ります。
シリコーンハイドロゲル素材は、低含水レンズである上に、高い酸素透過性をもっています。
パソコン・スマホの長時間使用
パソコン・スマートフォンを長時間する方は、まばたきの回数が減り、涙が蒸発してドライアイが悪化します。
こまめに休憩をとり、目を休ませるようにしましょう。
また、意識的にまばたきの回数を増やすことも有効です。
エアコン
エアコンの使用により部屋が乾燥し、ドライアイが悪化することがあります。部屋の湿度には注意してください。
屈折矯正手術後・内眼手術後
屈折矯正手術(レーシックやICL手術など)や内眼手術(白内障手術など)により、ドライアイが悪化することがあります。
これらの手術では、角膜を切開するため、角膜の知覚神経が切断されます。角膜知覚が低下すると、刺激に対する反応が鈍くなり、瞬きが減り、涙の分泌が減ります。
生活習慣
運転をよくする、夜更かしをする、旅行や出張が多いこともドライアイのリスクになります。
運転時はまばたきが減ることやエアコンの風が直接当たることで涙の蒸発が盛んになります。また夜になると人間の生理機能で涙の分泌が減ります。そのため、夜更かしはドライアイを悪化させます。
旅行や出張においては、機内やホテルの部屋は非常に乾燥しているため、涙の蒸発が促進します。
花粉症
ドライアイで涙が少ないところに、花粉などのアレルギーを起こす物質が入ると長く目の中にとどまったりすることで症状が悪化します。ドライアイも花粉症も悪化するという悪循環となります。
病気
シェーグレン症候群や膠原病(リウマチなど)といった疾患があると、ドライアイを起こしやすくなります。
お薬
抗不安薬・抗精神薬・抗ヒスタミン薬・利尿薬などの薬の中に、ドライアイになりやすいものがあります。また、抗がん剤の中にドライアイを起こしやすい薬があります。
特に注意したい薬剤はTS-1(ティーエスワン)という抗がん剤です。TS-1は涙を減らすだけではなく、成分が涙に混ざることで角膜上皮障害や涙道閉塞を起こすことが多く報告されています。
ドライアイの治療
1. 点眼治療
人工涙液や
ヒアルロン酸点眼液
水層の補充をする目薬です。人工涙液には、マイティア点眼液やソフトサンティアがあります。涙の水層に近い成分で作られています。
ヒアルロン酸点眼液は、粘り気があり、水層を長い時間保持します。ヒアルロン酸点眼液の濃度には、0.1%とより粘り気がある0.3%があります。
ジグアス点眼液
ジグアス点眼液は、油層と水層とムチン層を分泌させる目薬です。
ムコスタ点眼液と
レバミピド点眼液
ムコスタ点眼液とレバミピド点眼液は、ムチン産生を促進するだけでなく、ムチンを産生するゴブレット細胞(杯細胞)の数を増やす効果があります。ムコスタ点眼液が先発品で、レバミピド点眼液が後発品です。
ステロイド点眼薬
ステロイド点眼薬は、ドライアイによる炎症を抑えるために使われます。副作用のことを考えて、低濃度ステロイド点眼薬が使われることが多いです。長期間使う場合は、眼圧が上がる方がいるので、定期的な眼圧測定をお勧めします。
血清点眼
自身の血液で作った目薬を、重症のドライアイの方に処方しています。採血後、遠心分離機にて血液を分離して作ります。
料金は無料です。
2. 涙点プラグ
点眼治療で効果がなかった場合、涙点(目頭の上下にある涙の出口)を閉じる治療をします。お風呂に栓をして水をためるイメージです。
涙点プラグは、コラーゲンプラグ(キープティア)とシリコン製プラグの2種類があります。
コラーゲンプラグは、ネバネバした液体を涙点から注入します。しばらくすると、体温で固まります。
しかし、2ヶ月ぐらいで溶けてなくなり、もとに戻ってしまいます。もとに戻るという安心感はありますが、効果が短く弱いといったデメリットもあります。
シリコンでできた固形のプラグは、つけている間は効果が続きます。
人によっては効果が強すぎて涙が溢れたりすることがありますが、そのような場合は取り除くことができます。
3.涙点閉鎖術
涙点プラグがはずれるなど合わない患者様は、涙点を焼灼して縫って閉じる治療をすることがあります。
一度行うと、簡単には元に戻せないため、適応を慎重に検討する必要があります。
4.マイボーム腺機能不全(MGD)の治療
ドライアイの約86%はマイボーム腺機能不全(MGD)が関係しています。
温罨法やリッドハイジーン(眼瞼清拭)といった家でのお手入れも重要になります。
治療費用(涙点プラグ)
涙点プラグ挿入術(4涙点)
3割 | 2割 | 1割 |
---|---|---|
約 12,500円 |
約 8,500円 |
約 4,200円 |
涙点プラグ挿入術(2涙点)
3割 | 2割 | 1割 |
---|---|---|
約 11,000円 |
約 7,000円 |
約 3,500円 |
涙点プラグ挿入術(1涙点)
3割 | 2割 | 1割 |
---|---|---|
約 5,500円 |
約 3,700円 |
約 1,800円 |
キープティア(両目)
3割 | 2割 | 1割 |
---|---|---|
約 9,000円 |
約 6,000円 |
約 3,000円 |
ドライアイに関する
よくある質問
- ドライアイは、どうしてなるのですか
-
加齢、コンタクトレンズ装用、パソコン・スマートフォンの長時間使用、エアコンの使い過ぎ、屈折矯正手術・内眼手術後、長時間運転、夜更かし、旅行や出張が多い、花粉症、シェーグレン症候群やリウマチなどの膠原病、抗不安薬・抗精神薬・抗ヒスタミン薬・利尿薬などの薬がドライアイ発症のリスクになります。
- ドライアイは、放置するとどうなりますか
-
角膜にキズがつき、異物感・痛み・視力低下などの症状がでます。
最悪の場合、角膜感染症・角膜混濁を起こし、視力が元に戻らなくなる場合があります。
- 市販の目薬で治りますか
-
市販の目薬は、低濃度で主に水層を補充するのが目的で、軽いドライアイなら症状が改善することもあります。
しかし、ある程度ドライアイが進行した方や自分にあった目薬を使いたい方は、病院での目薬の処方をお勧めします。
病院で処方される目薬には、油層と水層とムチン層に効果のあるジグアス点眼液、ムチンを産生するゴブレット細胞(杯細胞)の数を増やす効果があるムコスタ点眼液とレバミピド点眼液、炎症を抑えるステロイド点眼薬など市販薬にはない種類があります。病院によっては、重度の角膜のキズに対して、ご自身の血液で血清点眼を作り処方(無料)することができます。
また、目薬だけでは治療困難な場合は、涙点プラグを挿入することもできます。
- コンタクトレンズは関係ありますか
-
コンタクトレンズは涙の層を分断するだけでなく、コンタクトレンズが涙を過剰に吸収することで蒸発を促進します。
「高含水」のレンズの方が水っぽくて良いように思われますが、「高含水」のレンズでは多くの涙が奪われ、レンズを介して蒸発する涙の量が多くなります。
ドライアイの方は、「低含水」や「シリコーンハイドロゲル素材」のレンズをお勧めします。
低含水レンズはコンタクトレンズに含まれる水分が少ないため、レンズに吸収されて蒸発する水分が減ります。
シリコーンハイドロゲル素材は、低含水レンズかつ高い酸素透過性をもっています。
- スマートフォンやパソコン作業で悪くなりますか
-
パソコン・スマートフォンを長時間すると、まばたきの回数が減り、涙の蒸発が亢進します。
休憩をとり目を休ませるようにしましょう。また、意識的にまばたきの回数を増やすことも重要です。
- アイメイクをしてもいいですか
-
アイメイクをすることにより、まつ毛の生え際にあるマイボーム腺の出口(開口部)を塞いでしまうと、油層の分泌が減ります。油層が減ると涙の蒸発が促進し、ドライアイが悪化するので注意が必要です。
- ドライアイ用メガネは効果がありますか
-
市販のドライアイ用眼鏡や眼鏡のサイドにカバーが付いたものや保水シートを付けられるものが販売されています。有効な場合がありますので試してみてもいいでしょう。また、花粉症対策にもなりますので、ドライアイと花粉症の両方がある方にはお勧めです。
- 水道で目を洗うことは有効でしょうか?
-
油層を破壊して涙の蒸発が促進され、ドライアイを悪化させる可能性が高いのでお勧めできません。
- 家でできることはありますか
-
ドライアイの約86%がマイボーム腺機能不全(MGD)が関係しています。
温罨法やリッドハイジーン(眼瞼清拭)をすることで、マイボーム腺からの油層の分泌が増え、涙の蒸発が減ることでドライアイの改善が期待できます。